エニグマ変奏曲より第8,9変奏
「エニグマ(謎)変奏曲」という曲名は、エルガーが「自作の主題による管弦楽のための変奏曲」の自筆譜の最初のページにエニグマと書いたことに由来している(実際にはエルガーはこの曲をエニグマ変奏曲と呼んだことはなかったという)。
この曲の初演の大成功はエルガーの名前をヨーロッパ中に知らしめた。
この「エニグマ」に関して、エルガーは初演のプログラムノートに興味深いことを書いている。
「私は謎について何も説明しない。<影の声>はそのままにしておかなければならない。変奏と主題の関連はわずかしか無いことを報告しておこう。全体を通して別の大きな主題が<進行する>が、それは演奏されることはないのだ」
エルガーはその後この「別の大きな主題」について、多くのことを語っていない。
一番有力とされているのは、その主題は存在する主題の対旋律に暗示されていて、スコットランド民謡「オールド・ラング・サイン」(日本では蛍の光として知られている)だとする説である。
しかし、この説はすべての変奏に適用することができず、学者の中にはこれを保留にもうけている人もいる。
このようにこの謎に対する完全な解答は未だに見つかっていない。
また、各変奏の頭にはエルガーの友人のイニシャルやあだ名の副題が付けられており、誰のことを描いた楽章なのかを積極的に明かそうとしている。
エルガーはこの曲を彼ら「中に描かれた友人たち」に捧げた。
今回演奏するのはその中の第8,9変奏である。

第8変奏(W.N.) ト長調 八分の六拍子

W.N.はエルガーの友人のウィニフレッド・ノーベリーをあらわす。
彼女はエルガーからのんびり屋だと見られていたらしく、彼女の平和に満ちた18世紀の家を描いているとも言われる冒頭クラリネットにより奏でられるリズムを他の楽器が受け継いで主題を変奏していく。

曲は4拍(2拍)のリズムと3拍のリズムが絡みあい、綿密、繊細に進んでいく。
途中で木管楽器の跳ねるようなトリルが現れ、

それにチェロの歌うようなソロが重なっていく。
それが終わると冒頭のリズムへと戻り、最後はLargamenteとなり、静かに終りを迎える。
最後の1stヴァイオリンの長音は止まることなく奏でられたまま、曲は第9変奏へと続いていく。

第9変奏(Nimrod.) 変ホ長調 四分の三拍子

ニムロッドは楽譜出版社ノヴェロに勤めるエルガーの友人、オーガスト・N・イェーガーの愛称。
「イェーガー」がドイツ語のニムロッド(狩人)であることにちなんでいる。
彼の助言によりエルガーがこの曲の第14変奏を当初よりも長く改良したことからも、彼がエルガーの良きアドバイザーであったことがうかがえる。
第8変奏から1stヴァイオリンの長音を引き継いで始まる冒頭は、弦楽器のみで演奏されるpppである。

曲はAdagioの大きなメロディーでクレッシェンドしながら気高く雄大に進んでいく。
途中、一度mfからppまでディミヌエンドされるが、コントラバスとファゴットがアンサンブルに戻るのを合図とするかのように、再び緩やかなクレッシェンドを始める。
曲は最後弦楽器が以下の譜例のような三連符をffzで演奏して緊張感を増し、すぐに最高潮のffを迎える。
その後はppになり、そのまま静かに曲を閉じる。

楽器編成

フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、弦五部 (以上Var.VIII,IXのみ)

参考文献

Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)
ELGAR VARIATIONS on an Original Theme(Enigma) for Orchestra Op.36(全音楽譜出版社/オイレンブルグ ISBN4-11-894053-1)

2013/3/9