ニュルンベルクのマイスタージンガーより前奏曲
ワーグナーの楽劇。16世紀ごろドイツで栄えた市民による歌唱芸術(その資格をもつ歌い手がマイスタージンガー)を題材として作詞・作曲したもので、構成は前奏曲、第1幕(全3場)、第2幕(全7場)、第3幕(全5場)の全3幕、15場からなる。ワーグナーの主要作品のなかでは唯一の喜劇的要素をもつものである。
物語は、マイスタージンガーの1人、靴屋のハンス・ザックスが、若い騎士ワルター・フォン・シュトルツィングを助けて歌合戦に勝たせ、恋人エーファを獲得させるという筋書き。
さまざまな人間模様が織り込まれ、芸術の価値を輝かしく肯定するとともに、天才が得た霊感を形式の枠の中で鍛え上げる必要性を説いた寓話にもなっている。
その豊かで鋭い洞察と暖かな人間性によって、本作品は幅広い人気を保っている一方、当時のワーグナーの思想である「ドイツ精神」の復興とともに反ユダヤ主義が織り込まれており、底に潜む暗い部分として疑問が投げかけられてもいる。

今回演奏するのは、劇中の主要動機が明確な形で要約されており、「作品の精髄」と呼ばれる前奏曲。祝祭的な雰囲気に満ちあふれた音楽である。
以下の4つの構成部分からなり、一見穏やかな全音階法、古典的なソナタ形式に回帰している。

呈示部第1主題群

ハ長調。冒頭は「マイスタージンガーの動機」。そして、木管楽器が新たな「求愛の動機」を示す。続いて、「ダヴィデ王の動機」。同音反復とオクターヴを突き抜けたイ音は、「マイスタージンガーの動機」にすでに示されていたもの。その次に「芸術の動機」。対位法的にホルン、ヴィオラ、チェロの対旋律を伴っている。そして最後にオーボエが「情熱の動機」を示す。これは経過句として第2主題のホ長調を準備する。

呈示部第2主題群

「愛の動機」はホ長調。冒頭の5度下行音程は「マイスタージンガーの動機」冒頭の4度下行の転回形。同時にこれは「求愛の動機」の拡大形でもある。つづく主和音の分散音型は、「ダヴィデ王の動機」と関連しており、この動機においては、ライトモティーフ相互の関連性が際だっている。「愛の動機」が発展して「衝動(苦悩)の動機」となる。この動機は劇中では第1幕ヴァルターの「資格試験の歌」の背景となって現れ、さらには第2幕「ニワトコのモノローグ」を支配する「春の促しの動機」へと変容していく。

展開部

イ長調から変ホ長調へと転じ、スケルツォ風の楽想となる。木管楽器によって「マイスタージンガーの動機」が縮小リズムとスタッカートで喜劇的に変容する。つづいて弦楽器群が「衝動の動機」を出す。「芸術の動機」もやはり木管楽器によって縮小リズムとスタッカートで再現され、フーガとして処理される。ここでは飛び跳ねるような「哄笑の動機」を伴っており、「芸術」が揶揄の対象となっている。

再現部

「マイスタージンガーの動機」がコントラバス、バス・チューバ、ファゴットの低声部に再現、その上に木管、ホルン、第2ヴァイオリン、ヴィオラによる「ダヴィデ王の動機」、1番クラリネット、1番ホルン、第1ヴァイオリン、チェロによる「愛の動機」が重なり、すぐれて対位法的な処理となる。ただし、これら動機の重ね合わせによって、「マイスタージンガーの動機」の再現効果自体は弱められている。
「哄笑の動機」、「芸術の動機」が続けて再現され、アウフタクトから再び「ダヴィデ王の動機」が再現し、コーダに向けて高揚する。
コーダでは再現部からの高揚がシンバルの一撃を伴う最終的な頂点を迎え、輝かしい「マイスタージンガーの動機」、飛び跳ねるような「哄笑の動機」、祝祭的なトランペットのファンファーレ音型によって高揚を重ねつつ、第1幕の聖カタリーナ教会の礼拝の場へとつながる。

参考文献

Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/)

2012/1/4